チンパンジーは、テレビ番組や動物園で見ることが多い、
愛くるしい動物の代表です。
同じ霊長類でもゴリラは獰猛な印象が強いですが、
その対極としてチンパンジーは優しいイメージがあると思います。
しかし、チンパンジーはその印象に反して大変力強いことが分かっています。
例えば握力を例にとっても、人の約5倍もあるといわれています。
5倍。。。といってもピンときませんよね。
実際、チンパンジーの握力ってどのくらいあるの?
そして、なぜ人より強いのでしょう?
◆チンパンジーの握力ってどのくらいあるの?
チンパンジーの握力は、およそ300kg程度あると考えられています。
それに対して一般的な人間ですと45kgくらいです。
約7倍です。
ちなみに、りんごを潰す人っていますよね。
すごいなぁって思うんですが、それでも握力は80kgくらいです。
チンパンジーには遥かに及びません。
◆実はチンパンジーの握力は正確に測れない?!
大人のオスのチンパンジーの体格は、
身長70~90cm、体重40~60kgといわれています。
握力についてですが、手の形が木登りなどに特化しています。
そのため人間と大分異なっており同じ測定器で測ることができないのです。
ですから、単純に人と比較することができません。
しかし、紐を引っ張るなどの行為は人と比較できます。
そのため引張り力は調べられています。
引張り力は平均的なオスが平静な状態でも、
片手だけで300kg以上出せるというデータがあります。
平均的な人間男性では両手で100~150kg程度です。
このデータからですと、チンパンジーは人の5倍程度の引く力を持つ計算です。
これらのデータより、握力は300kg程度あると考えられているのです。
◆なぜ人より強いのでしょう?
確かに木に登り手だけで枝を伝って移動する様子を見ると、
上半身、特に腕回りの力は相当強いと想像できます。
それではなぜチンパンジーはこんなにも握力が強いのでしょうか?
理由としては
・収縮率が高い
・力を出せる速筋の割合が高い
・有力な仮説
・力を出せる速筋の割合が高い
・有力な仮説
の3つがあります。
・収縮率が高い
チンパンジーの筋肉繊維は人より大分長く(程度は場所により異なる)、
力を入れて筋収縮する際の収縮率が高くなるため出せる力が強くなります。
これはバネと同じです。

上記の図のように、同じ巻き方のバネが2本あります。
それぞれの長さは違います。
AB同じように収縮させれば、長い分だけ反発する力が増します。
・力を出せる速筋の割合が高い
筋肉には2種類あります。
チンパンジーの筋肉にも速筋と遅筋があります。
これは人と同じですよね。
ですが、瞬発力や急激な力を担う速筋を形成する遺伝子の活性化により、
速筋の割合が人より大変高いことが分かっています。
つまり力を出せる筋肉がひとよりも多いということです。
こうした理由により、
チンパンジーの力は握力を含め人より大変強くなっています。
・有力な仮説
また有力な仮説として、
人より腕の筋肉の動きをつかさどる神経が少ないことがあげられます。
神経が少ないと、脳からの指令に対して動く神経の数が少なくなります。
そのため、人が得意とする複雑で繊細な動きは苦手となります。
チンパンジーは人よりも不器用ということです。
ですが、より単純で画一的な動きをすばやく行えることになります。
こうした要因からも、握力など単純な動きに対して、
より多い筋肉繊維をすばやく使って、強い力を出せると考えられています。