春と秋に行われるお彼岸。
死んだ人に自分の思いを告げるお盆とは違った大切なイベント。
あの世である彼岸は西の方角に、
この世である此岸は東の方角に位置すると言われていまして、
お日様が真東より昇って真西に沈む秋分の日と春分の日は、
あの世とこの世がいちばん近くなる日であると思われてきました。
ですから先祖供養をするようになりました。
そんなお彼岸に出されるおはぎにはどんな意味が込められているのでしょうか?
◆「ぼた餅」と「おはぎ」の呼び方の違い
まず春と秋に行われるお彼岸には両方とも
餡子をふんだんに使ったおはぎが出されると思います。
お彼岸の定番ですが、この時出されるおはぎは呼び方が同じではありません。
春のお彼岸はぼた餅で、
秋のお彼岸がおはぎと呼ばれています。
違いは使われる餡子の違いで、
春に行われるお彼岸での、ぼた餅は「粒あん」が使用されますが、
秋に行われる時は、おはぎには「こしあん」が使われます。
昔は今と違って、一年中小豆が簡単に手に入る環境ではありませんでした。
お彼岸の歴史は江戸時代までさかのぼります。
この頃の小豆は4月から6月にかけて種まきを行い、
9月から11月が収穫の最盛期になります。
9月に行われるお彼岸には一番旬の小豆を使ったおはぎが作られたのです。
取れたての小豆は餡子にすると柔らかくて美味しいですが、
保存しているうちに皮が固くなり、餡子にして食べられなくなります。
そこで皮を取り除き、こしあんとして食べられるようになったのです。
これが4月のお彼岸の頃のおはぎです。
このように「ぼた餅」と「おはぎ」の呼び方の違いというのは、
使われる餡子の種類の違いというわけです。
現代では「ぼた餅」と「おはぎ」を、
餡子の種類で厳密に呼び方を変えるところは少なくなっていますが、
季節の行事を重視し、
代々受け継がれてきた伝統を重んじる所では、
いまでもしっかりと餡子の種類にこだわりを持って作っています。
◆「おはぎ」にはどんな意味があるのか?
どうして「ぼた餅」や「おはぎ」が、
お彼岸で使われるようになったのでしょうか?
答えは「ぼた餅」や「おはぎ」に使われている小豆にヒントがあります。
江戸時代は現代と違って、
甘い調味料である砂糖はとても貴重な存在でした。
将軍や侍など身分の高い人は、
砂糖を使った食べ物を普段から食べる事もできましたが、
庶民にとっては高根の花。
当時の人が食べていた甘味料は木の実や水あめ、はちみつ、干し柿が中心でした。
そんな高級品の砂糖ですが、
値段が高いだけで手に入らないわけではありませんでした。
ご先祖様にお供えするなら。
そういう意味を込めて、
一年に2回は高級品である砂糖をつかった
「ぼた餅」や「おはぎ」を用意したと言われています。
小豆にももちろん意味があります。
魔除けの効果があると信じられていた小豆は邪気を払い、
自分やご先祖様にふりかかる災厄を退ける効果が期待されていました。
・高級品である砂糖を使ったおもてなし。
・小豆に込められた厄払い。
この2つ意味がお彼岸にぼた餅やおはぎを食べる理由と言われています。