日本の伝統芸能の中で、
世界的に大きな称賛を浴びているもののひとつとして歌舞伎があります。
歌舞伎は古くからの伝統を紡ぐ形でお家芸として、
伝統を守る各家ごとにその技術が伝えられてきました。
その一方で、新しい世界(例えばアニメ)とのコラボレーションや
グローバルな世界への挑戦などが次々と生まれてきております。
そういった革新的な行いが今日の日本を飛び越えた評価を受けるに至っています。
そんな歌舞伎の世界ですが歌舞伎役者と芸能人などが結婚する際において、
「梨園」という言葉をテレビで見かけます。
この梨園と言う言葉は歌舞伎界を表している言葉として使われています。
では、どうして歌舞伎の世界を「梨園」と呼ぶのでしょうか?
◆梨園とはどうしてそう呼ぶのでしょうか?
実は「梨園」という言葉は歌舞伎由来の言葉ではありません。
それにも関わらず「梨園」という言葉を目にすると歌舞伎を連想します。
「梨園」と聞くとなんだか浮世離れした世界を想像してしまいます。
それは江戸の大衆文化に馴染んでいた人気役者を称えるために、
そのように呼んだのではないかとの推測も立ちます。
ですが、梨園という言葉は本来中国の昔の言葉に由来するんです。
それは中国が唐という呼ばれ方をしていた時代の話がもとになっています。
唐から日本へは優れた建築技術や、律令制度などの政治の仕組み、
優れた学問などが伝えられました。
唐は漢詩の全盛期としても知られる時代であることから、
非常に文化的な嗜好の高い時代であったといえます。
そのような時代背景もあり、
時の皇帝である玄宗皇帝が歌や踊りといった芸事を好む皇帝でした。
また皇帝自らがその歌や踊りを指導するほどの熱の入れようでした。
そのような熱の入った指導をした場所。
そこには梨の木が多く植えられている場所だったと言われています。
こういった時代背景から、転じて芸能全般を梨園と称するようになりました。
この中国の梨園という言葉が、日本に伝えられ、
江戸時代から歌舞伎界を指す言葉へと変化していったと考えられています。
歌舞伎は今で言えばまさに当時の芸能界です。
人気俳優の浮世絵などがポスターのごとく売られていたりしましたからね。
そんな手の届かない憧れのスターが存在した場所が「梨園」だったんです。
◆最後に
そんな歌舞伎には現在日常のなかで普通に使用される言葉がたくさんあります。
例えば。。。
・十八番(得意とした歌舞伎の演目18種から)
・花道(舞台への通路でご祝儀(花)を渡したことから)
・愛想尽かし(女性が男性と縁を切ること)
・どんでん返し(場面が変わる際の太鼓の音から)
・正念場(役者の一番の見せ場から)
・幕の内弁当(お芝居の間の休憩時に食べたことから)
・なあなあ(なあという掛け合いにたいしなあとのみ答えることから)
などがそうです。
一見関係のなさそうなものでも歌舞伎から生まれた言葉であったりします。
そのように歌舞伎から生まれた言葉が、
知らず知らずのうちに日常生活において一般的に浸透しているのです。
このことからも、いかに歌舞伎が、
市民の生活の中に受け入れられるとともに時代の象徴だったのかがわかります。